次に向かったのは、太郎の作品。
一見何が描かれているのかよくわからないこともあり、
「強いエネルギーを感じる」「怖い」など印象が語られましたが、
対話を重ねながらじっくりとみていくうちに、
「強烈なエネルギーで仕事と育児の両立をしている感じ」
「大きい目で見貼られている感じ。ちゃんとしなきゃだめだ!って
プレッシャーをかけられているみたい」
など、自分の置かれている状況が語られ始めました。
対話の後半で、ファシリテーターから、第五福竜丸が水爆実験の被害を受けた事件に影響を受けて
描かれた作品であるという説明があり、
「でも、まさか、こんな風に鑑賞されるなんて、太郎さんも思ってもみなかったでしょうね(笑)」とのコメントが。
でも、仕事と育児の両立って、ある意味、理不尽さとの闘いのような側面もありますから、
何か共通する心理がありそうな気がするのは私だけでしょうか(笑)?
その後、比較鑑賞したのは、戦争を経験する前の作品。
静かで重厚感があり、先ほどの作品とは全く異る印象を受けるとの声が多数。
「戦争を経験して大きな喪失体験をした方ですが、戦後もその辛さや悲愴さはあまり
作品に出ていません」とファシリテータからコメントがありました。
この作品の選定基準は、
「大きな喪失体験をした同一作家の喪失経験前後の作品。その比較鑑賞ができるもの。
可能であれば、喪失体験後の作品の評価が高まっている作家」でした。
実は、出産経験は大きな喪失体験。
働き方はもちろん、パートナーとの関係や友人知人との関係、
身体的な変化やプライベートの過ごし方まで、生活の全てが大きく様変わりし、
自分の時間・身体・心のほとんどは子供のために注がれるようになります。
もちろん、喜びもあるけれども、実は大きな喪失も同時に抱えている事に気づかず、
「幸せなはずなのに、どうしてこんなにつらいのだろう」と悩んでいたりする。
*意外だと思われがちですが、結婚や妊娠なども強いストレッサーになります。見落とされがちですが、おめでたいライフイベントでも心理的負担感は高いため、周囲や本人が気づかないだけで、体調不良を引き起こすこともあるのです。
そこで、喪失体験を経たからこそ、素晴らしい作品を描くようになった作家の作品を鑑賞することで
育児中の自分自身と共通点を感じ取れたら・・という意図があったのでした。
とはいえ、どのように感じるのかは、個々の自由ですけどね。
この作品に関しては、ベビー達の反応がとてもよく、
指をさし「うー」「あー」とお喋りをしていたのが、とても印象的でした。
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